itoichiのブログ

ノンフィクションとフィクションの間の話です。

6. 欲しいものがなくならない

私はまだ、ティファニーのダイヤモンドバイザヤードを手に入れられていない。

 

 

もう諦めモードである。

 

 

ティファニーじゃなくて、スタージュエリーのやつでもいいよ。

 

 

もう諦めモードである。

 

 

 

たまに思い出して、夫にねだってみる

 

 

 

 

「俺は財布が欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

そうじゃない。

 

 

ティファニーのダイヤモンドバイザヤード買ってくれたら、財布くらい買ってやるよぉぉぉぉ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欲しいものがなくならない。

 

 

あれもこれも、着飾るものが欲しくてたまらない。

 

 

 

 

昔は、着ている服で、自分を作り上げようとしてた。

その服が好きなんじゃなくて、その服を着るような人だと思われたい、と。

 

 

 

モテたくて、スカートを履いてみたり、

かわいいねって言われたくて、服を選んでみたり。

椎名林檎になりたくて、セクシーな服を手にとって、戻したり。

 

 

 

 

 

その服を着て、誰かになりたかったのだろう。

 

 

 

その服を着て、誰かになりたかった私を愛して欲しかったのだろう。

 

 

 

 

 

それが当たり前だと思っていた。

 

 

「彼氏がね、もっと可愛い服を着ればいいのにって」

そう言って、友達は笑いながら言った。

「あなたに気に入られるために着てるんじゃない、私が着たいから着てるのにね」

 

 

 

 

 

 

そうか、着たい服というのが存在するのか、と。

 

 

 

 

 

 

愛されるために着る服だけじゃないのか、と。

 

 

 

 

 

 

何を選べばいいのか、ますますわからなくなった。

 

 

 

 

私は、自分で選んでると思い込んでただけで、自分で選んでなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

誰かに愛されるために着る服だけが脱ぎ散らかっていた。

どこのパーティーに呼ばれたんだろう?みたいな服たちは、クローゼットの中で沈黙を守っていた。

 

 

 

 

 

 

誰かに愛されるための私は裸だった。

何も正しくない気がして、何も選べなかった。

 

裸のまま、生きてきたんだと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その当時に付き合っていた彼が

「俺に合わせてばかりで、何がしたいの?」と吐き捨てて、私を捨てた。

 

 

 

 

 

 

そこから、裸の私は、私が着たい服を探し始めたのだ。